高齢者の転倒予防 老老介護の実体験から学んだ室内・外出・体づくりの対策

介護

「転倒」という言葉を聞いて、どのくらい深刻に受け止めるでしょうか。

高齢者にとって転倒は、骨折→入院→認知症の悪化→寝たきりというきっかけになることがあります。「ちょっと転んだだけ」が、その後の生活を一変させることがあるのです。

私は元看護師で、現在は高齢の母と二人暮らしをしています。母も私自身も転倒を経験してきました。母は玄関先で前のめりに転倒して顎を切り、薬をもらいに行く途中でも転んでいます。私自身も1年前に駅の階段から転落しました。

さらに私には脳出血の後遺症があり、めまいが起きやすい状態です。介護する側も転倒するという現実を、身をもって経験してきました。

高齢化が進み、老老介護が当たり前になりつつある今、転倒予防は本人だけでなく介護する側にとっても大切なテーマです。

この記事では、母と私自身の実体験をもとに、室内・外出・体づくりの転倒予防対策をお伝えします。

転倒が怖い本当の理由

転倒が怖い理由は骨折だけではありません。

転倒→骨折→入院→体を動かさない時間が続く→筋力・認知機能が急激に低下する「廃用症候群」につながることがあります。高齢者が転倒後に急に弱ったように見えるのはこのためです。

特に骨折しやすいのは大腿骨(太ももの付け根)・脊椎(背骨)・手首です。大腿骨の骨折は手術が必要になることも多く、回復に長い時間がかかります。そのまま寝たきりになってしまうケースも少なくありません。

女性は閉経後に骨粗鬆症になりやすく、骨折リスクが一気に高まります。私自身も骨粗鬆症の治療中です。骨粗鬆症は自覚症状がないまま進行するため、定期的な骨密度検査をおすすめします。

だからこそ転倒予防は「転ばないようにする」だけでなく、「転んだときに大きなけがにならない体をつくる」という視点も大切なのです。

転倒が起きやすい場所と原因

転倒はどこでも起きますが、特に多い場所と原因があります。

室内

実は転倒の多くは自宅の中で起きています。

  • カーペットや玄関マットの端に足を引っかける
  • 畳で寝ている場合、自分の掛け布団につまずく
  • ベッドからの転落
  • 暗い廊下や段差

私の母はベッドから落ちたことがあります。それからは我が家はベッドのフレームをなくし、マットレスだけを床に置く形にしました。また、カーペットや玄関マットは私自身がつまずくため全て外しました。見た目よりも安全を優先することが大切です。

玄関・外出先

玄関先は意外と危険な場所です。母が以前住んでいた妹夫婦宅では、玄関先に自転車が置いてあり、それをよけようとして前のめりに転倒。アスファルトに顎をぶつけて血が止まらなくなりました。

外出先では疲れてくると転倒リスクが高まります。都会のスーパーは通路が狭く、休める椅子もないことが多い。高齢者がスーパーの中で転倒して救急車が来る場面を何度も見てきました。

駅・階段

私自身、1年前に駅の階段から転落しました。脳出血の後遺症でめまいが起きやすい状態なのに「まだ大丈夫」と過信していたのです。階段は高齢者だけでなく、体調に不安がある方にとっても危険な場所です。

室内でできる転倒予防

転倒予防で最初に取り組むべきは、自宅の環境を整えることです。費用をかけなくてもできることがたくさんあります。

室内履きをかかとのあるものに変える

スリッパや靴下だけでの生活は、足が滑りやすく転倒のリスクが高まります。おすすめは、かかとを立てて靴のように履くこともでき、かかとを踏んでスリッパのようにも使えるタイプで、滑り止めがしっかりついているものです。家で洗えるのもポイントです。

いかにも介護用という見た目のものより、少しおしゃれなデザインのものを選びました。高齢者は見た目を気にすることも多いので、本人が気に入って使い続けられることが大切です。

ただし、かかとを踏んでスリッパのように使っている場合は転倒リスクが上がるので、しっかりかかとまで履くよう声かけが必要です。ベランダへの行き来がある場合は、脱ぎ履きしやすいものを選ぶと続けやすいです。

外出用の靴は紐なしを選ぶ

外出する際は必ずかかとのある靴で出かけてください。サンダルや草履は転倒リスクが高まります。靴ひもを結ぶ動作やかがむ動作は、めまいがある方には特に危険です。紐なしのスリップオンタイプで、立ったまま脱ぎ履きできるものがおすすめです。

もし立ったまま履ける靴の購入が難しい場合は、玄関に手すり・椅子・長い靴べらを用意するだけでも安全に靴を履くことができます。

カーペット・玄関マットを外す

見た目がよくても、カーペットや玄関マットは転倒の原因になります。私自身がカーペットの端につまずいたことがきっかけで、思い切って全て外しました。まずは敷物を減らすことを優先してください。

動線にものを置かない

廊下やよく通る場所にものを置かないことも大切です。ちょっとした荷物や段ボール、椅子などが転倒のきっかけになります。特に夜間、暗い中で動くときに足に引っかかりやすいので、動線は常にすっきりさせておく習慣をつけてください。

ベッドをマットレスだけにする

母がベッドから落ちた経験から、我が家はベッドのフレームをなくしてマットレスだけを床に置く形にしました。万が一落ちても床との距離が短いため、大きなけがになりにくいです。

畳で布団を敷いて寝ている場合は、掛け布団が足元に落ちていないか朝晩確認する習慣をつけてください。布団につまずいて転倒するケースは意外と多いです。

手すりを設置する

トイレ・浴室・玄関・廊下への手すり設置は転倒予防の基本です。我が家を選んだ理由のひとつも、至る所に手すりがあるバリアフリーの住環境でした。介護保険を利用すれば、手すりの設置費用の一部が補助される場合があります。ケアマネジャーに相談してみてください。

照明を明るくする

夜間のトイレは転倒が多い場面のひとつです。高齢者は「電気代がもったいない」と言って電気をつけないことがあります。しかし暗い中での移動は転倒リスクが一気に上がります。

我が家はシーリングファンライトを取り付けました。照明とファンが一体になっているため、夏も冬もオールシーズン使えます。扇風機のようにコードが邪魔にならず、床に物が増えないのも転倒予防になっています。センサーライトも電気代の節約になり高齢者に受け入れてもらいやすいです。

断捨離も転倒予防

転倒予防として見落としがちなのが断捨離です。物が多い家は動線にものが置かれやすく、転倒リスクが上がります。食器・書類・服・バッグを思い切って減らしたことで、家の中がすっきりし動きやすくなりました。

親の断捨離は時間がかかります。「捨てたくない」「まだ使える」という気持ちが強いからです。だからこそ、元気なうちから少しずつ始めることをおすすめします。

外出時の転倒予防

外出時の転倒は室内以上に危険です。アスファルトや段差での転倒は、骨折など大きなけがにつながりやすいからです。

シルバーカーの活用

母は近くのスーパーへの買い物や外出時にシルバーカーを使っています。シルバーカーは歩行を支えるだけでなく、疲れたときに座れる・荷物を入れられる・前のめりに転倒することを防ぐという利点があります。

実は私自身も半分以上使っています。牛乳・味噌・野菜・米など重い荷物を運ぶときに本当に助かっています。使い慣れるまでには少し時間がかかるので、転倒が心配になってからではなく、早めに購入して慣れてもらうことをおすすめします。

住む街・外出先の環境を選ぶ

私が今の住まいを選んだ理由のひとつが、街全体のバリアフリー環境でした。道幅が広く段差が少ない、スーパーの通路が広く至る所に椅子が置いてある、車椅子の方が自走して買い物をしている。物件を見に来たときにその光景を見て「ここがいい」と直感しました。

外出先を選ぶ際は、椅子があるか・段差が少ないか・通路が広いかを意識してみてください。

ヘルプカードを活用する

私は脳出血の後遺症があるため、電車に乗るときはヘルプカードをつけて人混みが空いた時間帯に移動するようにしています。以前は「まだ大丈夫」と過信してヘルプカードをつけていませんでしたが、駅の階段から転落してからは必ずつけるようにしました。

体に不安がある方は、ヘルプカードをつけることで周囲の人が気にかけてくれるようになります。転倒してからでは遅いのです。

体づくりで転倒を防ぐ

環境を整えるだけでなく、体そのものを鍛えることが転倒予防の根本です。毎日少しずつ続けることが一番大切です。

母の習慣:足ツボ・バランスボール

母は毎日、足ツボとバランスボールを使った体操を続けています。亡くなった甥がよく使っていたバランスボールを、今は母が毎日の体操に活用しています。バランスボールは体幹を鍛えるだけでなく、バランス感覚を養う効果もあります。

母の継続力は本当に素晴らしいと思っています。私の方が母より歩くのが遅いくらいです。続けることの力を母から教えてもらっています。

私の習慣:ゴミ拾い(福拾い)と散歩

脳出血での入院・退院を経てリハビリ生活が始まりました。寒い公園で歩行訓練を続けていた頃、不安と孤独の中でSNSで見かけたのが「ゴミ拾い」の投稿でした。

「福拾い」という言葉に出会い、「これなら私にもできるかもしれない」と思ったのが最初の一歩でした。最初は1周で精一杯だった公園のウォーキングが、少しずつ2周、3周と歩けるようになりました。今年で6年目になります。

ゴミ拾いに特別な準備は要りません。トングと袋があれば10分でも、ひとつでも始められます。散歩しながら日光を浴びることで骨を強くするビタミンDも生成されます。転倒予防と心のリハビリを同時にできる、私にとって大切な時間です。

栄養・食事も転倒予防のひとつ

体を動かすことと同じくらい大切なのが栄養バランスです。私は骨粗鬆症のため薬と注射で治療しています。女性は特に骨粗鬆症になりやすく、転倒したときの骨折リスクが高まります。

母は最近、噛む力や飲み込む力(嚥下機能)が低下してきています。そのため我が家では蒸し器を使った蒸し料理がメインになっています。高齢になると食が細くなりがちです。食べやすい形で栄養を摂ることが、筋力維持・骨の強化につながります。

白内障は早めに手術を

視力の低下も転倒の大きな原因のひとつです。母は両目に白内障があり、一時的に視力が大きく低下していました。最初は入院で片目ずつ1年あけて手術し、2回目は日帰りで行いました。

認知症が進んでしまうと手術の判断や術後管理が難しくなります。視力に不安がある場合は、できるだけ早めに眼科に相談することをおすすめします。

筋力低下を放置しない

高齢になると筋力の衰えからさまざまな不調が出てきます。子宮脱など、筋力低下が原因の疾患も増えてきます。足の指でタオルをつかむようなリハビリも効果的です。完璧にやろうとしなくていいのです。毎日少しずつ、無理のない範囲で続けることが一番の転倒予防になります。

介護する側も転倒する〜老老介護時代のリアル〜

転倒予防というと、高齢者本人の話として考えられることが多いです。しかし介護する側も転倒するという現実を、忘れてはいけません。

私自身、脳出血の後遺症でめまいが起きやすい状態です。それでも「まだ大丈夫」と過信して、長い間ヘルプカードをつけずにいました。現役のころ患者さんに「ヘルプカードをちゃんとつけて」と言っていた自分が、いざその立場になるとつけられなかったのです。

駅の階段から転落してから、ようやく現実を受け入れました。介護する側が倒れては、元も子もありません。自分の体を守ることも、介護の一部です。

子どもは親の老いをどこまで理解できるか

子どもは親の老いをどこまで理解できるでしょうか。

親は子どもに心配をかけたくないと思っています。私自身も「まだ大丈夫」と過信して、ヘルプカードをつけずにいました。また、転倒予防のことを伝えすぎると、親の自尊心を傷つけてしまうこともあります。

子育てと介護は似ているところもありますが、大きな違いがここにあります。子どもは成長しますが、親はできないことが少しずつ増えていく。だからこそ、伝え方に気持ちが必要です。

一緒に住んでいても、離れて暮らしていても、一番大切なのは親の変化に早く気づくことです。それは日頃からの親への関心から生まれます。

「愛の反対は無関心」という言葉があります。難しく考えなくていいのです。ただ、親に関心を持って見守ってあげてください。その積み重ねが、転倒を防ぐ一番の対策になると私は思っています。

まとめ 転倒予防は継続することが一番の対策

  • 室内履きはかかとのあるものに・カーペットは外す
  • 動線にものを置かない・照明を明るくする
  • 外出時は必ず紐なしのかかとのある靴・シルバーカーを活用
  • 体幹・バランス感覚を毎日少しずつ鍛える
  • 散歩・日光浴で骨と筋肉を維持する
  • 白内障など視力の問題は早めに対処する
  • 栄養バランスを意識する
  • 介護する側も自分の体を守る
  • 親の変化に早く気づくために日頃から関心を持つ

どれかひとつから始めてください。完璧にやろうとしなくていいのです。毎日少しずつ続けることが、転倒を防ぐ一番の対策になります。

高齢者の介護予防に関する詳細は、 厚生労働省「介護予防について」 でも確認できます。


※この記事は私さくらこの実体験・個人的な見解をもとにした情報です。介護・医療・法律・税務・相続などに関する判断は、必ず専門家(医師・弁護士・税理士・ケアマネジャー等)にご相談ください。本サイトの情報を参考にされた場合の結果について、運営者は責任を負いかねます。

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