「介護が始まる」と気づいたのは、義父に在宅酸素の機械が導入されてからでした。
在宅酸素が始まった頃、私はまだ車で動けていました。雨の日も車でお弁当を届けに行けましたし、病院への付き添いも車があれば苦ではありませんでした。
ところが在宅酸素の機械が家に入ってからは、状況が変わり始めました。夜中にアラームが鳴った、カニューレ(鼻に装着するチューブ)の付け方がわからない、機械の操作がうまくいかない・・・そういった呼び出しがちょくちょく来るようになりました。
さらに義父が一人で買い物に行くことも難しくなってきて、「あれを買ってきてほしい」という要望が増えていきました。ケアマネジャーに相談して訪問介護と訪問看護を導入し、ようやく少し落ち着いてきた頃、私が脳出血で倒れました。
今振り返ると、仕事が忙しくて疲れが限界に達していたのだと思います。
私が倒れたことで、義父の施設入所への希望が強くなりました。でも施設はなかなか見つからない。車も乗れなくなったため、夏の暑い日に1時間ほど歩きながら施設を探し回った記憶があります。体力的にも精神的にも、あのときが一番つらかったかもしれません。
介護する側が倒れてはどうしようもない。その現実を身をもって経験しました。
このページでは、その経験をもとに「介護の始め方」を順番にまとめています。介護はある日突然始まります。「そのとき」に慌てないために、今知っておいてほしいことをお伝えします。
介護は「突然始まる」という現実
介護の始まりは、多くの場合突然です。
- 転倒して骨折し、入院した
- 認知症の診断が下りた
- 脳梗塞や心疾患で急に動けなくなった
- 一人暮らしが難しくなってきた
「まだ大丈夫」と思っていた親が、ある日を境に介護が必要な状態になる。その「ある日」は予告なくやってきます。
準備がない状態で介護が始まると、仕事・家事・介護を同時にこなしながら、慣れない手続きや施設探しをすることになります。私がそうでした。知識があれば防げた失敗や後悔がいくつもありました。
まず知るだけでいいのです。このページをきっかけに、少しずつ準備を始めてみてください。
介護が始まる前にやっておくべき5つのこと
介護が始まる前に整理しておくと、いざというときに慌てずに済みます。
- 親の健康状態・かかりつけ医・飲んでいる薬を把握しておく
- 介護保険制度の基本を知っておく
- 家族間で役割分担を話し合っておく
- 自宅の安全対策を整えておく
- 親の金銭・手続き情報を整理しておく
👉 親の介護が始まる前にやっておくべき準備 同居・別居・実家じまいまで実体験をもとに解説
ステップ① 介護保険の仕組みを知る
私は看護師だったため、介護保険の仕組みや使えるサービスについては知識として知っていました。でも「知っていること」と「実際に手続きをすること」は全く別でした。
特に大変だったのが書類上の手続きです。私は義父の介護をしていましたが、養子縁組をしていなかったため、書類上の続柄が複雑になり、手続きのたびに説明が必要でした。
実の親の介護であれば比較的スムーズに進む手続きも、義父母・ステップファミリーなど家族関係が複雑な場合は想定外の壁にぶつかることがあります。早めにケアマネジャーや市区町村の窓口に相談しておくと安心です。
要介護認定の申請から使えるサービスまで、まず基本を知っておくだけで選択肢が大きく広がります。
👉 介護保険料は40歳からスタート 仕組み・使えるサービス・親の介護への備え方を解説
ステップ② 在宅介護か施設介護かを考える
介護が始まると必ず直面するのが「自宅で介護を続けるか、施設に入ってもらうか」という問題です。
私は今も母を自宅で見ています。母本人の「歩けなくなるまでは家にいたい」という希望、兄妹との費用の話し合い、そして私自身の体力を考え、これらを整理しながら、今の答えを出しました。
どちらが正解ということはありません。家族の状況によって答えは変わります。まず選択肢を知ることが大切です。
👉 在宅介護と施設介護の違いを比較 家庭に合った選択のポイント
ステップ③ 施設の種類と選び方を知る
施設への入所を考えるなら、まず種類と特徴を知ることが必要です。特養・老健・有料老人ホーム・グループホーム・サ高住——種類が多く、費用も入居条件も全く違います。
特養は費用が抑えられる反面、入居待ちが数年になることもあります。「いつか特養に」と考えているなら、早めに申し込みだけでも済ませておくことをおすすめします。
👉 老人ホームの選び方完全ガイド 種類・タイミング・見学チェックリストを実体験で解説
在宅酸素やインスリン注射が必要な場合、施設探しはさらに難しくなります。実際に面接まで進んで断られた経験をもとに書いています。
👉 施設探しで断られ続けた理由と解決策 在宅酸素・インスリン注射がある親の施設選び
ステップ④ 転倒予防に取り組む
高齢者にとって転倒は「ちょっと転んだだけ」では済まないことがあります。転倒→骨折→入院→認知症の悪化→寝たきり、というきっかけになることがあるからです。
母は玄関先で前のめりに転倒して顎を切り、私自身も駅の階段から転落しました。介護する側も転倒するという現実を身をもって経験しています。
👉 高齢者の転倒予防 老老介護の実体験から学んだ室内・外出・体づくりの対策
ステップ⑤ 親が亡くなった後の手続きを知っておく
介護の先には、見送るときがやってきます。
亡くなった後の手続きは、悲しみの中で限られた時間内にこなす必要があります。死亡届・年金・相続何も知らないまま迎えると、家族全員が混乱します。元気なうちに「どんな手続きがあるのか」だけでも知っておくと、家族の負担が大きく違います。
👉 親が亡くなる前後に必要な手続きを時系列で解説 実体験からわかった準備と注意点
介護でよくある失敗パターン
- 「まだ大丈夫」と先送りにした→ 急に判断が必要になり、十分に比較できなかった
- 介護を一人で抱え込んだ→ 精神的・体力的に限界を超えて共倒れになった
- ケアマネジャーに相談しなかった→ 使えるサービスを知らないまま過ごした
- 費用のことを家族で話し合わなかった→ いざというときに意見が割れた
- 介護する側の健康を後回しにした→ 介護者が先に倒れた(私がそうでした)
介護で一番大切なこと
介護で一番大切なことを聞かれたら、私は迷わずこう答えます。
「介護する側が倒れないこと」
介護する側が倒れてはどうしようもない。それを身をもって経験しました。自分の体を守ることも、介護の一部です。
一人で抱え込まず、ケアマネジャー・訪問介護・家族——使える人・サービスをうまく頼ってください。完璧な介護をしようとしなくていいのです。
「今日は1つだけ調べる」「今日は家族に1つだけ話す」それだけで十分です。小さな一歩が、介護を続ける力になります。
