親の老人ホーム入居を考えたときに、最も大きな不安は「お金が足りるのだろうか」という点ではないでしょうか。
- 老人ホームの費用がどれくらい必要なのか想像がつかない
- 年金や貯蓄だけで本当に払えるのか心配
- 入居後に想定外の出費が出て生活が苦しくならないか不安
こうした悩みは多くの方が抱えるものです。準備をしないまま入居を進めてしまうと、途中で費用が続かなくなり、施設を変更せざるを得ないケースもあります。
これまでの記事で費用の仕組みや内訳について整理してきました。今回はさらに踏み込み、年金・貯蓄・資産活用・公的制度 といった現実的な準備方法を解説します。
この記事を読むことで、老人ホーム費用をどのように備えればよいかの全体像がつかめ、親も家族も安心できる生活に近づけます。結論としては、複数の収入源と制度を組み合わせることが、費用不足を防ぐ最善策 です。
老人ホームの費用に備える必要性
想定以上に長くなる入居期間
老人ホームの入居期間は数年程度と考える方も多いですが、実際には10年以上に及ぶケースもあります。平均寿命が延びている今、介護が必要な状態が長期化することは珍しくありません。そのため、最初に思っていた以上の費用が必要になる可能性があります。
親の状態変化による費用の増加
入居当初は介護度が軽くても、時間の経過とともに要介護度が上がれば、必要なサービスが増えて費用も高くなります。さらに医療的なケアが必要になると、看護師が常駐する施設に移る必要が出てきたり、医療費やオプション費用が加わる場合もあります。将来の変化を見越して準備をしておかないと、途中で資金が足りなくなるリスクがあるのです。
お金の準備方法
年金をベースに考える
老人ホーム費用の基本は、親が受け取る年金です。月々の年金額と施設の月額費用を比較することで、どれくらい不足するのかを把握できます。年金でカバーできる範囲を明確にすることが、資金計画の出発点となります。
貯蓄や退職金をどう活用するか
不足分を補う手段として、貯蓄や退職金があります。特にまとまった額の退職金は、入居一時金や初期費用の支払いに充てやすい資金です。ただし無計画に使うと後々の生活費が不足するため、必要な期間に応じて分割して使う工夫が必要です。
不動産・資産を売却・活用する選択肢
自宅や土地といった不動産を資金に変える方法もあります。売却して資金化するほか、リバースモーゲージなどの制度を利用して現金化する方法もあります。また、賃貸として貸し出せば定期的な収入を得ることも可能です。
子ども世代のサポートは現実的か
子どもが仕送りでサポートするケースもありますが、現実には自分たちの生活や老後資金の準備も必要です。全額を負担するのは難しいため、「どの程度なら無理なく支援できるか」を家族で率直に話し合っておくことが大切です。
利用できる公的制度
介護保険による自己負担軽減
老人ホームで受ける介護サービスには介護保険が適用されます。自己負担は原則1割ですが、所得に応じて2割や3割になる場合もあります。施設選びの際には、介護保険がどの範囲まで使えるのかを確認しておきましょう。
高額介護サービス費制度
介護サービス費が高額になった場合、一定の上限を超えた分が払い戻される制度です。たとえば自己負担が月数万円を超えた場合に、限度額を超えた部分が後日返還されます。長期入居を考えるうえで大きな助けとなる制度です。
医療費控除やおむつ代控除の活用
入居中の医療費は確定申告で医療費控除を受けることができます。さらに、医師の証明があればおむつ代も医療費控除の対象になります。毎月の負担は小さくても、年間で見ると節税効果は大きくなるため、領収書を必ず保管しておきましょう。
生活保護や社会福祉制度
経済的に費用の負担が難しい場合、生活保護や自治体の福祉制度が活用できる場合があります。条件は厳しいですが、申請すれば費用の一部または全額が補助されるケースもあるため、最後のセーフティーネットとして知っておくことが重要です。
費用準備で失敗しないためのポイント
複数の施設を比較して費用感をつかむ
資料請求や見学を通じて複数の施設を比較することで、相場観が見えてきます。ひとつの施設だけを見て決めてしまうと、後で「もっと条件の良い施設があった」と後悔することになりかねません。
追加費用の項目を把握しておく
月額費用の基本部分だけでなく、オプションサービスや医療費、日用品費などの追加費用に注目することが大切です。細かい部分を見落とすと、入居後に「予想外の出費」に悩まされることがあります。
将来を見据えた資金シミュレーションを行う
入居時点の費用だけでなく、5年後・10年後の費用を試算しておくことが重要です。介護度の変化や医療的ケアの必要性を想定し、余裕を持った計画を立てることで、途中で資金不足に陥るリスクを減らせます。
まとめ 事前準備で安心できる介護生活を
老人ホームの費用は、家賃や食費といった基本部分に加えて、介護度の変化や追加費用によって思った以上に膨らむことがあります。だからこそ、年金・貯蓄・資産・公的制度といった複数の方法を組み合わせて準備しておくことが大切です。
完璧な資金計画を立てるのは難しいかもしれませんが、あらかじめ情報を集めておくだけでも安心感は大きく変わります。資料請求や見学を通じて費用のイメージをつかみ、少しずつ将来を見据えていきましょう。
「いつか必要になるかもしれない」と思って準備しておくことが、親にとっても、そして支える家族にとっても心強い支えになります。