
- 親が亡くなったのに、火葬まで日数が空いてしまいそう
- 遺体をどう安置すればいいのか、方法や費用がわからない
- 直葬を選んだけど、本当にそれでよかったのか不安になる
大切な家族が亡くなったとき、すぐに葬儀や火葬をできるとは限りません。
感染症の影響や火葬場の混雑、親族との関係性の事情などで、思い通りに進められないこともあります。
そんなとき、どんな選択ができるのか——冷静に考えることが求められます。
私はCOPDを患っていた義父を、コロナ禍の中で直葬で見送りました。
火葬までは9日間。その間、現実的な安置方法を選びながら、心の整理も行いました。
この記事では、直葬を選んだ私の体験をもとに、遺体安置の方法と費用、選び方の実例を詳しくお伝えします。
この記事を読むことで、直葬を考えている方や、火葬まで日数が空いてしまう方が、**「どうすればよいのか」「費用はいくらかかるのか」**を具体的に知ることができます。
形式にとらわれなくても、大切な人を丁寧に見送る方法はあります。9日間の直葬体験が、参考になれば幸いです。
施設からの突然の連絡と対応
義父はCOPD(慢性閉塞性肺疾患)を患い、関東地方の高齢者施設で静かに暮らしていました。
ある日、施設から電話があり、「新型コロナのクラスターが発生したこと」と「義父の容体が急変したこと」が同時に知らされました。
そしてその翌日、再び連絡が入り、義父が亡くなったとの訃報を受け取りました。
驚きと悲しみの中、施設側からは「なるべく早く部屋を空けてほしい」と伝えられました。
しかしその時点で、感染の拡大が深刻で、私たちは現地に行くことができませんでした。
そこで、施設の方と相談し、遺体の搬送と安置、部屋の片付けを業者に一任することになりました。
「何か残しておきたいものはありますか?」という心遣いの声もありましたが、義父が生前大切にしていた木箱と理容師時代のハサミはすでに私の手元にあったため、「特にありません」とお伝えしました。
火葬までの9日間と“直葬”という選択
訃報からすぐに火葬場を予約しようとしましたが、混雑しており最短で取れるのは2日後の「友引」でした。
「友引に火葬をするのは避けたい」と考える家族も多く、私たちも例外ではありませんでした。
義父自身も「簡素でよい」「形式にとらわれず、静かに送ってほしい」と生前語っていたことから、友引を避け、9日後に火葬を行うことを決めました。
この時点で課題となったのが、遺体の安置方法でした。
遺体の安置方法と費用について
火葬まで9日もあると、遺体の腐敗や臭い、見た目の変化などが懸念されます。
ドライアイスによる安置
もっとも一般的な方法が、ドライアイスを使った冷却安置です。
遺体の腹部を中心にドライアイスを置き、体温を下げることで腐敗を抑えます。
- 1日あたりの費用目安:5,000〜8,000円
- 9日間合計費用:45,000〜72,000円
ただし、ドライアイスは毎日交換が必要で、夏場や室温が高い場所では臭いや皮膚の変色が起きる場合もあります。
そのため、5日以上安置する場合は、ドライアイス以外の方法も検討されることが多いです。
薬剤による防腐処置(エンバーミング)
もう一つの選択肢が、エンバーミングという専門技術です。
血液を薬剤に置き換えることで遺体の腐敗を防ぎ、外観をきれいな状態に保つことができます。
- 費用の目安:10万〜20万円
- 保存可能期間:10〜14日間
見た目も自然で、臭いもほとんどありません。
ただし実施には専用施設と技術者が必要なため、事前に確認が必要です。
費用面ではドライアイスより高額ですが、精神的な安心感が得られる方法でもあります。
(参考)薬剤処置の延長使用例:東日本大震災のとき
2011年の東日本大震災では、火葬場や埋葬の遅れが深刻でした。
当時、被災地の多くでエンバーミングが活用され、2週間以上の安置に対応した例もあります。
一部の医療団体や葬祭業者が連携し、衛生とご遺族の精神的負担の軽減のためにエンバーミングが重要な役割を果たしました。
安置方法の選び方と判断基準
どの方法を選ぶかは、以下の4点で判断するとよいです。
- 火葬までの日数
- 季節と室温(夏場は注意)
- 遺族の費用的・精神的な負担
- 安置先の設備と対応可否
私たちの場合は、時期的に冬場でありドライアイスによる安置を選びました。
葬儀社が毎日確認・交換してくれたため、安心して任せることができました。
誰が参列したのか
通夜・告別式は行わず、火葬だけの直葬。参列したのは以下の通りです:
- 私(母方の長女)と兄
- 兄の長男と次男
- 妹夫婦と長男と長女
- 義父の妹の夫とその息子(妹は施設入所中)
父方の親戚の多くは疎遠だったため、連絡しても安置場には誰も来ることはなく直葬には数名参加する程度でした。それでも私たちは、心から父を見送ることができたと思います。
葬儀社の対応と骨壷の選択
脳出血の後遺症がある私は、骨壷を持って長時間電車での移動は難しい状況でしたが葬儀社の方がそれを察して頂き「小さめの骨壷」にすることを提案してくださいました。
入りきらなかったお骨は、供養して処分するとのことで、信頼してお願いできました。
直葬にかかった費用(関東地方の場合)
項目 | 費用の目安 |
施設の遺品撤去 | 5~10万円 |
火葬・直葬費用 | 15~20万円 |
骨壷・保存管理費 | 2~5万円 |
合計 | 22~35万円 |
※地域差やオプションで変動あり。
おわりに
「直葬」は形式を省いた分、気持ちを込めて父を送ることができました。親戚付き合いが薄い中でも、自分なりの納得のいく別れ方ができたと思っています。
私たちは形式にはこだわらず、妹家族と一緒に近くのレストランで、小さな骨壷を紙袋に入れて窓際に置き、みんなで故人が好きだった日本酒で献杯しながら食事をしました。その際、妹夫婦も「私たちも直葬でいいよね」と子どもたちに伝えたところ、娘(成人)は思わず泣き出してしまいました。
しかし、親の死について話し合うことは、家族にとってとても大切な機会だと思います。親が自分の希望をしっかりと子どもに伝え、子どもも親の考えを理解しておくことが、残された家族が迷いや後悔をしないために必要です。言葉で伝えるのが難しい場合は、文章で残しておくのも良い方法だと思います。大切なのは、家族が互いの思いを共有し合うことだと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。